2023年7月、フランスで30連休の夏休みを過ごして気付いたことをまとめておきます。
人は働くために生まれてきたのではない
この夏、欧州各地を巡っていますが、「人は働くために生まれてきたのではない」ことを、皆さん、十分わかっていて楽しい夏を過ごしています。
高城未来研究所「Future Report」Vol.629
日本で30年ほど暮らしていると全く気付きませんでしたが、人生において「仕事」ってそんなに重要じゃないんだなという雷に打たれたような新発見。
実は「仕事」って、すき焼きで言うところの「お麩」くらいのものであって、百歩譲っても、肉や卵なんかじゃない。
「仕事は善、遊びは悪」と考えているのは、おそらく世界でも、日本人やアメリカ人くらいではなかろうか。
フランスの企業では、1年に5週間の有給休暇(勤続年数や手当などでもっと長い人もいる)が法律で定められており、その間は一切仕事をせず、趣味や家族との時間を大切にします。
*日本の労働基準法では10~20日/年
「好きなことを仕事にしよう」は罠である
私は「プロジャグラーになる」という夢を叶えて、周りにも「好きなことを仕事にしている」仲間は多いのですが、それって本当に人生において大事なことなのだろうか?
「好きなことが仕事」というパワーワードを隠れ蓑に、目の前のタスクをこなす自己肯定感に溺れて、お金を稼ぐこと、仕事を取ることが人生のプライオリティの頂点になっていないだろうか。
本当に好きなら、それが仕事かどうか、人から評価されるかどうかって、本来そんなに重要なことじゃなくないですか?
「明日から1円も稼がなくていい」と言われたとき、本当に今と同じことを続けるだろうか。
「仕事の忙しさ」を何かの勲章のように自慢して、本当にやりたいことを後回しにしていないだろうか。
「好きなことを仕事にした」人こそ、だんだんと思考停止して、陥りやすい罠かもしれない。
自分の仕事で、より多くの人を笑顔にして、社会への貢献を最大化し、より多くの達成感を得ることが人生の全てだと思っていた私には、あまりに衝撃的な気付きだった。
「Live to work」ではなく「Work to live」
You live to work, we work to live.(君たちアメリカ人は働くために生きてる。僕たちフランス人は生きるために働く。)
Netflix『Emily in Paris』Season 3
アメリカのテレビドラマシリーズ『エミリー、パリへ行く』より。
フランスでは「Work to live」、日本やアメリカはまさに「Live to work」状態。
“余暇”そのものを楽しめているか
アリストテレスは、真の余暇こそが、あらゆる美徳のなかで最高のものだと論じている。
オリバー・バークマン『限りある時間の使い方』(かんき出版)
なぜなら余暇は、それ自体以外に目的を持たないからだ。戦争で勇敢に戦うことも美徳だが、それは勝利という目的のための手段にすぎない。
ラテン語で仕事を意味する「negotium」は、直訳すると「余暇がない」という意味になる。つまり、余暇を楽しむのが人間本来の姿であり、仕事はその例外ということだ。
なぜ生産的に働くために休まなきゃならないんだ?
オリバー・バークマン『限りある時間の使い方』(かんき出版)
海辺でのんびりしたり、友達と食事したり、ベッドでごろごろするのに、なぜ「仕事のため」という言い訳が必要なんだ?
あなたは休日に「何もせずのんびり」できていますか?
「何の役にも立たないことに時間を使い、その体験を純粋に楽しむこと」が本来の余暇であるにも関わらず、休みの日も将来に備えて投資をしていないと落ち着かないのが現代社会。
もっと余暇そのものを楽しもう。休日に何かを生産するのはもうやめよう。
「目標達成マインド」からの解放
哲学者のキーラン・セティヤはこういう活動を「非目標性の活動」と呼ぶ。
好きな曲を聴いたり、友人と会って話したりするとき、僕たちは何らかの目標に向かっているわけではない。その価値は目標達成ではなく、ただその活動をすることにある。
何かを達成するためではなく、ただ歩くために歩く。それは目標に向かう活動が多すぎる日々のなかで、大きな救いになるかもしれない。
オリバー・バークマン『限りある時間の使い方』(かんき出版)
目標達成マインドは「未来が幸福であり、現在は不幸である」という欠乏感を、無限ループで生んでしまう。
もう、夢とか目標とか語るのやめませんか?
遠い未来や思い描いた理想ではなく、今ここにある日々こそが人生なんだ。
お金をかけずに遊べるかどうか
ニューヨークはもとより、ロンドンやパリと比べてもバルセロナは働かない人ばかりです。
高城未来研究所「Future Report」Vol.591
お金をかければそれなりに遊べるのが現代社会ですが、バルセロナの人たちはお金をかけずに遊ぶのに長けているんです。
これが意外と難しい。
つまり、とことん働かず、お金をかけずに遊ぶことができるかどうかが、バルセロナを心底楽しめる秘訣なのです。
現代の日本では「遊ぶ=お金を使う」という価値観が一般的ですが、実は0円で楽しめる遊びって山のようにあるんですよね。
外的要因に左右される幸せ(消費活動)は、ドーパミンによる興奮に過ぎず、セロトニンは分泌されません。
「死ぬときに後悔すること」ベスト7
- 健康を大切にしなかったこと
- 自分のやりたいことをやらなかったこと
- 美味しいものを食べておかなかったこと
- 仕事ばかりで趣味に時間を割かなかったこと
- 行きたい場所に旅行しなかったこと
- 会いたい人に会っておかなかったこと
- 愛する人にありがとうと伝えなかったこと
(抜粋)
大津 秀一『死ぬときに後悔すること25』(致知出版社)
1000人を超える末期患者を見届けた医師が語る最後の後悔。
ラテン語で言うところの「メメント・モリ(=自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな)」の極致。
「今日が人生最後の日のつもりで」とはよく言ったものですが、「つもり」なんかじゃなく、実際に今この瞬間が人生最後であるかもしれないという事実を受け入れないといけない。
花見もせず、餅も食わんと、芝居ばかりしている、そんな人生嫌やから
やはり初日を開けるという絶対法則はあるけども、それ以前に毎日をちゃんと生きたいっていうのがあるから。
アーティストインタビュー 松本 雄吉 – P.A.N.通信 Vol.51
何かの為に滅私奉公して駄目にする1日にはやっぱりしたくないからね。
春になったら花見に行きたいし。花見もせず、餅も食わんと、芝居ばかりしている、そんな人生嫌やから。
アートコンプレックス代表・小原啓渡による、維新派主宰・松本雄吉さんのインタビュー。この言葉に何度救われたことだろう。
桜を見ながら大切な人たちと過ごす時間が特別なのは、それが永遠には続かないという事実があるからだ。もしも春が何度でも無限にやってくるなら、そこに価値はないだろう。
まとめ
「いつか仕事が落ち着いたら、やりたいことをやりたい!」
いつか十分なスキルが身に付いたら、
いつかお金が貯まったら、
いつか時間が余ったら、
いつか心の平穏が訪れたら、
残念ながら、その「いつか」は永遠にやってこない。
今この瞬間が「理想的で完璧な未来」のためのリハーサルではなく、人生の本番そのものであるという残酷な真実を受け入れない限り。
きっと残り2000週間ほどの人生。
とっても大切なことに気付けてよかった。
真剣にやれよ!仕事じゃねぇんだぞ!
タモリ
過大な評価をいただき恐縮しますが、僕は単に働きたくないだけなんですよ。
高城未来研究所「Future Report」Vol.636
そして、心地よい時間を増やしたいんです、コスパでもタイパでもなく。
だから、「SNSもしない」んです。