岸見一郎さん・古賀史健さんの著書『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)を読みました。
世界累計で500万部を超えるベストセラー。
フロイト、ユングと並ぶ心理学三大巨匠の一人、アルフレッド・アドラーの思想(アドラー心理学)を、「青年と哲人の対話篇」という物語形式を用いてまとめた一冊。
「どうすれば人は幸せに生きることができるか」という哲学的な問いに、きわめてシンプルかつ具体的な“答え”を提示してくれる名著。
他者の課題を切り捨てよ
あらゆる対人関係のトラブルは、他者の課題に土足で踏み込むこと——あるいは自分の課題に土足で踏み込まれること——によって引き起こされます。
『嫌われる勇気』
課題の分離ができるだけで、対人関係は激変するでしょう。
われわれは「これは誰の課題なのか?」という視点から、「自分の課題」と「他者の課題」とを分離していく必要があります。
たとえば、子どもが勉強しないのは「子どもの課題」であって、「親の課題」ではありません。(親が代わりに勉強しても意味がないため)
「馬を水辺に連れていくこととはできるが、水を呑ませることはできない」ということわざのように、子どもが勉強する気になればいつでも援助をする用意があることを伝えた上で、他者の課題には土足で踏み込まないスタンスが大切です。
自己肯定ではなく、自己受容
60点の自分に「今回はたまたま運が悪かっただけで、ほんとうの自分は100点なんだ」と言い聞かせるのが自己肯定です。
『嫌われる勇気』
それに対し、60点の自分をそのまま60点として受け入れた上で「100点に近づくにはどうしたらいいか」を考えるのが自己受容になります。
できもしないのに「わたしはできる」「わたしは強い」と暗示をかけて自らに噓をつくのではなく、「できない自分」をありのままに受け入れて、できるように前に進んでいく。
「大切なのはなにが与えられているかではなく、与えられたものをどう使うか」というアドラーの言葉がありますが、「変えられないもの」を肯定的にあきらめて、「変えられるもの」に注目する勇気が必要です。
*あきらめという言葉には、本来「明らかに見る」という意味がある。
人生とは連続する刹那である
人生全体にうすらぼんやりとした光を当てているからこそ、過去や未来が見えてしまう。いや、見えるような気がしてしまう。
『嫌われる勇気』
しかし、もしも「いま、ここ」に強烈なスポットライトを当てていたら、過去も未来も見えなくなるでしょう。
フロイト的な原因論に立ち、人生を登山のように考えている人は、自らの生を「線」として捉えています。
しかし、アドラー心理学の立場では、人生とは連続する刹那であり、われわれは「いま、ここ」にしか生きることができないと考えます。
免罪符としての過去や、ありもしない未来ばかりを見て、かけがえのない「いま、ここ」を真剣に生きないことこそが、人生における最大の嘘である、とアドラーは言います。
まとめ
高校の同級生であり、寺社仏閣系インスタグラマーの福井俊助氏(@fukui.s291)のおすすめで読みましたが、これは近年稀にみる良書。
今、振り返ると、無理やり「自己肯定」して自分を苦しめていた経験があるので、これからは意識的に「自己受容」して、ストレスのない努力を目指していきたい。そして「他者信頼」と「他者貢献」も。
人生に悩むすべての人に贈る、「まったくあたらしい古典」をどうぞ。
備考:私はKindleで読みましたが、対話形式の『嫌われる勇気』はオーディブルに最適と福井氏。