またまたまた今年も京都精華大学で授業をしてきました

2018年、2019年、2020年に引き続き、京都精華大学にて、特別講師として授業をさせていただきました。

写真左から、

です。

京都精華大学とは

京都精華大学は、英語英文科と美術科をもつ短期大学として1968年に開学。
日本で初めて「マンガ学部(2006年~)」を設置した大学として有名で、クリエイターを目指す学生さん達が多数在籍しています。

「発展ことば演習 / パフォーマンスアート論特講」

さあ、5年に渡って続いた本企画もいよいよ最終回を迎えます。

ジャグラー/マジシャンの視点から、パフォーマンスを通しての表現テクニックや創造的思考について、ワークショップを交えた2コマの授業を行いました。

今年はオンライン授業も同時開講

感染症対策に伴い、Zoomを使ったオンライン授業も同時開講。
ソウル市内から留学生の生徒さんも参加していただきました。

自己紹介を兼ねて、ボールジャグリングのデモンストレーション。

ジョニオによる、コインマジックのデモンストレーション。

ノンバーバル・コミュニケーションを体験しよう

身体接触のみを用いた、ノンバーバル(=非言語)コミュニケーションを体験。

手のひらと背中の接触面の「圧」を用いて対話をするトレーニングです。
(参考:いいむろなおきマイムカンパニー

抽象から具体を導く演習

本を使った予言マジックのプレゼンテーションとして、抽象度の高いイメージを提示し、具体的な概念を言語的に導くワークを行いました。

ex)赤い / 切る / 皮をむく / 朝食べる / 果物
→リンゴ

2人ペアになって、抽象ワードをより抽象度の高い順に5つ提示し、最終的に相手がギリギリ正解に辿り着く絶妙なラインを目指します。

Zoomの生徒さん達にも発表していただきました。
コーンポタージュ、鬼、和田アキ子など、珍回答続出で大爆笑。

2コマ目は質疑応答&トーク

コロナウイルスが収束しても、人々の考えはそう簡単には戻らない

西本:コロナ禍でオンラインが普及した中で「目の前にお客さんがいない」ことも増えましたよね。パフォーマーにとっては、なかなか辛いことも多いんじゃないでしょうか?

酒田:ジャグリングって、やっぱり「生で見てナンボ」の部分が大きいので、あえてオンラインでのショーはせず、Zoomでのレッスンのみ開講しています。僕も幼稚園時代に生でジャグリングを見て衝撃を受けたのがきっかけなので、映像では空気の振動が失われるというか、電子モニターの枠に収めるのがもったいない感じがするんですよね。

ただ、当初は「ジャグリングのオンラインレッスンなんてできない」と思っていたので、やってみれば意外と上手くできたのは収穫でした。今後、コロナウイルスが収束しても、人々の考えはそう簡単には戻らないし、また新たなパンデミックの可能性もあるので、あらゆるクリエイターはオンラインでの生き残り方を考えておいて損はないでしょうね。

生で見る良さとオンラインの良さって、両方あると思うんですよ

ジョニオ:やっぱり生で見る良さとオンラインの良さって、両方あると思うんですよ。

オンラインでマジックを提供するには、コロナ禍以前のパフォーマンスをそのままやっていてはダメで、オンライン用にやり方を完全に変えないといけない。お客さんとインタラクティブなやり取りが難しい分、相互作用のないトリックを選ばないといけない。ただ、マジックにはオンラインだからのメリットもあって、そちらを強調するように考えています。

パエリアを作ってみようとするときに、パエリアの特殊なお米を扱ったことがないと厳しい

学生:ひとつの技を習得するための練習期間はどのくらいですか?

ジョニオ:これは時期(キャリア)によって違って、最初は基礎を形成する期間が必要。

たとえば、料理なら、切る、つぶす、焼く、煮込む…etcとか、調味料の基本的な知識を身に付けたあとは、レシピさえ見ればちょっと試行錯誤すれば大体すぐ作れるじゃないですか?

マジックも同じで、最初に基礎を身に付けていれば、新しいものを導入するのは早いです。でも、基礎が盤石じゃないときに新しいものを入れようとすると難しい。「今日はパエリアを作ってみよう」とするときに、パエリアの特殊なお米(バレンシア米)を扱ったことがないと厳しいですよね。

基礎の上に乗っかっているものなら1日でお客さんの前に出すことができますが、そうでなければ、数ヶ月や1年かかることもあります。

嫌いなことを7年間毎日続けるってどう考えても不可能ですよね

酒田:「ジャグリングってどれだけ練習すればいいですか?」ってよく聞かれるんですが、「何時間ボール投げても飽きね~、もっと投げて~」くらい好きになれば、もはや練習時間は関係ないと思います。

米国のジャーナリスト、マルコム・グラッドウェルは、著書『天才!成功する人々の法則(原題:Outliers)』の中で「1万時間の法則」を提唱しました。これは「天才と呼ばれる人たちは、1万時間に及ぶ膨大な練習によって才能が開花した」と説く法則です。

ちなみに、1万時間って毎日4時間練習して、7年弱くらいかかるんですけど、嫌いなことを7年間毎日続けるってどう考えても不可能ですよね。寝食を忘れて夢中になれるものを見つけるのが一番の近道であり、真理だと思います。

西本:ちなみに、好きなものを見つける方法ってあるのかな?

酒田:これは僕の個人的な考えですが、「一目惚れのように好きになった」ものは長続きしません。一方で「やっていくうちに徐々に好きになった」ものは、どんどんハマっていって、気付くと「沼人」になっています。

ジョニオ:「ぬまんちゅ」ね。

酒田:そうそう。最初から「これだ!」と決めなくても、やってみて飽きてやめるを繰り返すうちに出会えるものだと思います。

ミスとトラブルはぜんぜん違う

学生:マジックで失敗したときはどうしますか?

ジョニオ:失敗とひとことで言っても「ミス」と「トラブル」はぜんぜん違いますよね。

ミスは演者の内的要因。トラブルは外的要因で、停電が起きたとかグラスが劣化で割れたとか。ミスはプロならコントロールしないといけないけど、問題はトラブルの方ですよね。トラブルに対応するためには心の余裕、頭のリソースに余裕がないといけない。つまり、その場でやってる手順自体は脳停止しててもできるくらい体に染みついてないといけない。それができていればトラブルがあっても最適な解決ができるのではないかと思います。

西本:そっちに目を向けるくらい、本業のメインの部分は無意識にできないといけない、と。

ジョニオ:そうですね。以前、500人規模のホールでマジックのイベントがありました。楽屋での話題で「お客さんがどんな人いたか覚えてる?」となったとき、キャリアが浅いマジシャンはまったく覚えてないのですが、ベテランになればなるほど「5列目のピンクのシャツの人がね」などしっかり覚えてるんです。それだけ余裕があるんですね。

お客さんからのツッコミもいっしょ。「どうやって勉強するんですか」「同業者のマジックを見てタネがわかるんですか」という定番の質問には予め答えを用意しておいて、ポンと答える。

西本:なるほど。そうしておけば、前もって答えを用意してるけど、いかにもその場で考えたような演技もできるようになるよね。

水泳は冬に上手くなり、スキーは夏に上手くなる

学生:スランプの解決法は?自分を責める時間が長いほどメンタルが病む、抜け出せない。

西本:まずふたりはスランプになることあるの?

酒田:ジャグリングにスランプは付き物ですよ。どうしてもキツいときは、思い切って離れてみるのも手です。

ジャグリングは悪いフォームで練習を続けると、悪いクセがついてしまってどんどん成功から遠ざかります。練習だからといって失敗ばかりしていると「失敗の練習」になるんです。世界一のジャグラーとして名高い、アンソニー・ガット(Anthony Gatto, 米, 1973-)は、ジャグリングを完全にやめて、2年ほどまったく違う庭師の仕事をしていた時期があるそうですが、復帰してもなお世界最高峰のジャグラーとして返り咲きました。「水泳は冬に上手くなり、スキーは夏に上手くなる」ことが実際に起こりうるんです。

ジョニオ:会えない時間が愛を育てる、的なね。

プラトーは停滞ではあっても、下降ではない

酒田:もうひとつ、スランプ脱出に役立つのが「上達曲線(成長曲線)」の理解です。

ジャグリングに限らず、上達っていうのは右肩上がりの直線ではなく、ノコギリ型の曲線を描くことが科学的に解明されています。いわば「階段」と「踊り場」が交互に訪れるイメージですね。この踊り場の部分を学習心理学では「プラトー(学習高原)」と呼びます。

プラトーの状態にあるときに、スランプだと感じることが多いのですが、ここで大切なのは、「プラトーは停滞ではあっても、下降ではない」ということ。つまり、「プラトーは次の飛躍のための準備期間なんだ」とポジティブに現状を受け入れることができれば、スランプや停滞期でも心が折れることはありません。

ルーティンのない生活だからこそ、中にルーティンを作っている

ジョニオ:僕はあんまりスランプはないですね。

僕ってめっちゃマルチタスクなんですけど、ひとつのことをガーっとやってるとどこかでエネルギーが切れる瞬間もあると思うんです。僕はいろんなことを同時にやってるから常に全部に弱火がついてる状態。何か1個やるときにはゴッっと燃やして、すぐ弱火に戻す。それを時間や日に分けてやってるので、本質的にはさっきのしんごさんの話になるんですけどね。

なので、趣味や仕事の中でもタスクを複数持っておくといい。普段描かない絵を描くとか、普段マンガを読む人は小説を読んだり、映画を観たり、美術館に行ったり。

僕は職業柄、飛行機で飛び回って、いろんなホテルに泊まったりするんですが、ルーティンのない生活だからこそ、中にルーティンを作っているんです。寝る場所は毎日違うけど、寝る前にはこれするとか、ホテルに着いたら必ずドリップコーヒーを買うとか。逆に、毎日同じ場所で生活がパターン化してる人は、パターン化しないものを意図的に置いていくと波が作れると思います。

シングルタスクを時間で区切って切り替えてるだけ

西本:僕が思うに、精華生ってシングルタスクの人が多いと思うんです。たとえば1個課題が終わるまで、次の課題は手を付けられないとか。マルチタスクってどうやったらできるようになる?

ジョニオ:実はマルチタスクって本来は無いんですよ。

シングルタスクを時間で区切って切り替えてるだけ。たとえば、動画編集ってやろうと思えば1日中できるじゃないですか?でも、そうやっちゃうとだんだん集中力がなくなったり妥協する部分が生まれてしまう。

だから、90分やったら途中でも中断して散歩するとか、本を読むとかいうのをタスクとして入れちゃう。これで強制マルチタスクができます。Googleカレンダーに1日のタスクとして「動画編集」とフワっと入れるのではなく、最初から休憩時間を決めておく。良いのは誰かと一緒にやることですけどね。

西本:なるほど、普段、日常生活でタスクとして位置づけてないものを、タスクとして位置づけちゃうってことね。

完璧主義ではなく、完了主義

西本:しんごはマルチタスクタイプでしたっけ?何か気を付けてることありますか?

酒田:いやいや、超シングルタスクですよ。ジョニオとは真逆なんです。

僕みたいなシングルタスク人間におすすめしたいのは、「完璧主義ではなく、完了主義を目指す」ことですね。100点を目指すがあまり0点をとってしまう、みたいなことってあるじゃないですか。

学生:ああ~(同意)

酒田:でも、社会で大切なのは、60点でもいいから一旦提出すること。そのあと編集できるものなら、何度でもブラッシュアップして仕上げていけばいい。社会や組織と関わる上では、その方が確実に評価されると思います。

自分が思ってる100点を冷静に考える

西本:仕事や成果物のクオリティを上げていく中で他に意識してることは?

ジョニオ:僕は自己肯定感エベレストって言ってるんですけど、その秘訣は「自分を過大評価しない」ということ。

自分が思ってる100点を冷静に考える。これが自分にとっての100点と思っているのが本当に100点なのか?それって120点じゃないの?100は出せる範囲だけど、120って奇跡じゃないですか。

実際のスキルよりも理想を高く見積もってしまうと、逆に自分の自信喪失につながってしまうから冷静に見た方がいい。そのためには他人の評価が必要なんですね。自分の評価と他人の評価をシステム化して分析した方がいい。客観的に差をちゃんと認識していないと、プロとして仕事にするのは難しいかなと。

ほんとにそれがお前の100点なのか?っていうところ

西本:自分の中で目指したいゴールがあって、でも相手はそこまで求めてなかったってことがあるとするじゃないですか。

相手が求めてる成果物のクオリティが70点なのに「いや、私は100点が出したいんです」と。70で出せばいいものを100出そうとするからしんどいし、最終的に出したのが90だったとして、相手は満足しているんだけど「わたしは100を出せなかった…」ってところで自己肯定感が下がってしまう。

ジョニオ:これでしんどくなるのは結果的に自分にとってマイナス。

もちろん100点を目指すことは大事で当たり前なんですけど、実際の現場で自分がどのくらい出せるかわかってないと、ギャップで苦しむだけですよね。「なんでできないんだ?」「今回も100点を出せなかった」がずっと続くと、もうどんどん落ちていくと思うんですよ。

西本:難しいよね。70点でいいんだって言ってるわけじゃないんだけどね。

ジョニオ:そうそう、70点を出しましょうって話じゃなくて「ほんとにそれがお前の100点なのか?」っていうところ。見誤るとしんどくなる。

「自己肯定」ではなく「自己受容」

酒田:これってまさにアドラー心理学ですよね。

「自己肯定」ではなく「自己受容」。たとえ60点でも、それがありのままの自分だと受け入れた上で、どうすれば100点に近づけるのかを考えていく。禅の世界でも「脚下照顧(きゃっかしょうこ)」という言葉がありますが、これはまさに「他人や理想を語る前に、自分の本性をよく見つめて、改善を重ねていこう」という教訓です。

西本:なるほどね。

酒田:さらに、脳科学の観点から言うと、人間の脳って「できないところばかりに目が向いてしまう性質」を持ってるんです。

生きていく上でネガティブな情報は危険を避けるための大事な情報だから。でも、できた部分に対して「なぜできたのか」「どうしたらもっと良くなるのか」を考える前向きな学び方もできるはずなんです。たとえ60点だったとしても、60点できている部分からの学びもあると思うんですね。

西本:100点を出せなかったから落ち込むのとはベクトルが逆よね。これが自信を喪失したときの立ち直り方にも繋がってくるのかな?

地図を持ってることも大事なんだけど、もっと大事なのはGPSの方

ジョニオ:自己評価がズレてるがゆえに、自信を喪失してしまう。自分で自分の首を絞めてる。ずっとつま先立ちで山登りをして「なんでこんな足しんどいの…?」みたいな。でも僕からしたら「いや、普通にかかと付けろよ」って話なんですよね。

西本:厳しく聞こえるけど、でも実はそれが一番大事なのよね。

ジョニオ:たとえば、自分がどの方向に行けばわからなくなったとき、地図を持ってることも大事なんだけど、もっと大事なのはGPSの方。

ショッピングモールにマップがあっても、赤い矢印の「現在地」がなかったら意味ないじゃないですか。自分が今どこにいるかがわからないと、どっちに進んでいいのかわからない。もちろん、GPSを自分でやるのも大事なんですけど、やはり教えてくれる仲間や先生の存在が大事だったりする。

「同期がさぁ~」って言葉、あれええよな

西本:そういう意味では大学っていう場はむしろ良いんだよね。

ジョニオ:クリエイターになったら孤独ですよ。自分でフリーでやっていこうと思ったら、フリーの仲間を見つけるのが結構大事かな。

西本:フリーランスの場合、会社員と違って、上司もできなければ、社会に出てから先生と呼べる存在もなかなか見つからない。

就職した友達の「同期がさぁ~」って言葉、あれええよな。つまり仲間がいるってことを言えてるわけやん。最近はお笑い芸人も養成所出身で「何期生で~」とか「同期の誰々が~」とか。ああいう環境をフリーランスは作りにくいよね。どうやって作ってますか?

ジョニオ:作ろうとして作ってないけど、外に出ようとしてればおのずと似たような人が集まってくるって感覚かな。別に異業種交流会とかmixiのコミュニティに入ってるわけじゃないし。

西本:(笑)

ジョニオ:人のつながりも、深める方向と広める方向がある。

海老蔵さんとかわかりやすいですけど、伝統的なこともやりつつ、ワンピースとか、キンコン西野さんとコラボしたりとか。クリエイターは深める方は好きだから放っておいても自分でやるから、僕が意識的に頑張ってるのは広める方向。外との交流。

西本:やっぱりぜんぜん違うジャンルの仕事してる人の方がおもしろい?

酒田:そう思いますね。特にパフォーマーは同じ業界で群れてしまう傾向があるんですが、あえて違う文化、違う世代と意識的に交流しないと人間が磨かれないし、つまり、文化が成熟しない。そして、社会の成長エネルギーも失われると思うんです。

好きっていうのはあくまで消費者じゃないですか

西本:絵を描くのが好き、好きをずっとやりたいっていうので精華大学に入ってきた人が多い。でも、クリエイターになるとか、社会に出てからもやっていくという文脈において、好きっていうのはあくまで消費者じゃないですか。

誰かが作ってるものを消費してる側から、自分が創り出す生産者に変わっていく。大学での4年間ってそういう時期やと思うんですよ。その中でのマインドの切り替えが必要になるんじゃないかなと。おふたりは切り替わる瞬間はありましたか?

酒田:僕は幼稚園の頃に大道芸を見て、ジャグリングに人生を救われて、ジャグリングっていう文化に感謝をしてるんですね。僕を育ててくれたんで。

そして、大学生のときに「僕を見てジャグリングを始めた」っていう子どもが突然現れたんですよ。当時の僕にとっては衝撃的なことで、立場が逆転したことでタイムリープみたいな感覚があって「こんなことあるんや」って感動したんですよね。それがマインドの切り替わりというか、プロを目指したひとつのきっかけですかね。

西本:なるほど。意図せずして「与える側」になったんやね。

それを客観視したときに「おれすごいんじゃね?」って

ジョニオ:結局、パフォーマンスもビジネスも、情報や能力の「差分」が価値になってくると思うんですよ。

重たい物を持ち上げられる人、持ち上げられない人がいるときに、持ち上げられる差分が仕事になるわけですよ。マジックできる人とできない人、もっと抽象度を上げると、人を楽しませることができる人とそうでない人の差分がビジネスになる。その差分が趣味の領域を超えた瞬間、職業としてやっていこう、提供側になろうと思ったかもしれない。もちろん、趣味でやってても人を楽しませることができるけど、クオリティを安定して出せるようになったということですね。

大学3年生で、大阪の老舗マジックバー「フレンチドロップ」で働いていたとき、弁護士事務所のグループのお客さんの前でMCをさせてもらったんですよ。21歳のペーペーが、弁護士という社会的立場のある大人たちの前で、場をちゃんと仕切ってるわけですよ。それを客観視したときに、「おれすごいんじゃね?」って。これは世の中の求められているエンタメの基準を超えた瞬間だと思ったんですよね。

西本:なるほど、いい意味で勘違いしたよね。

でも、それはしないといけない勘違いなのかもしれない。自信はないけど「今の私ならやれるかもしれない!」って気持ちが大きな一歩になる。

ジョニオ:実際、大学卒業してすぐはぜんぜん食えなかったので勘違いだったわけで(笑)

でも、今振り返ると、ある種の無知さはあっていい。特に若いうちは。最初はしんどいけど飛び込んでしまえばいい。飛び込んでみないと池の深さはわからない。実際はヒザ上ぐらいかもしれないし、溺れるかもしれないけど、溺れてるうちに泳げるようになりますからね。しかも、日本では溺れても生活保護があるから大丈夫。

学生:(笑)

西本:それを30、40歳になってからはしんどいから、できるだけ若い方がいいよね。

ジョニオ:飛び込むなら若い方がいいですよ。

僕の中でエピックモーメントで、めっちゃスベったんですよ

ジョニオ:中3の夏休み、とあるカーディーラーの夏休みイベントで5000円をもらったのが初めてのギャラでした。

この日は僕の中でエピックモーメントで、めっちゃスベったんですよ。でもですよ。失敗してないんですよ。これまでは「マジックは失敗しなければウケる」と思ってたんです。このとき初めて「マジックは成功したのにスベる」っていう経験をして、楽屋のお弁当を食べられなかったですね。

学生:(爆笑)

ジョニオ:僕はドラゴンボールを読みながらノートにキャラの名前を書きだして、何回出てくるかを数えるくらい分析好きなんですけど、ショーの後、なんでスベったか分析したんです。結果的には、トランプの広げ方と角度が悪くてお客さんからぜんぜん見えてなかった。それがわかって納得できて、持って帰ったお弁当を家で食べたんですけど。

西本:結局食べたんかい。

ジョニオ:自分ではいいと思ってるのに評価されないってことはこの先ザラにあるので、どうマインドを持っていくか。

TikTokでも、YouTubeでも、ツイッターでも何でもそうなんですけど、出したものが評価されるのには理由があるし、されないにも理由がある。だから分析なんです。そこのリーチ率とかを理解した上で試行錯誤しないと、やみくもにやっても疲弊するだけです。

大学生の時間を貯蓄して、将来にもってきてほしい

西本:最後に学生さんに伝えたいことはありますか?

酒田:これは僕が大学生のときに知りたかったくらいなんですけど、勝間和代さんの「時間投資マトリックス」という概念をご紹介します。

緊急度と重要度の軸で、皆さんの行動を「消費」「投資」「浪費」「空費」の4つに分けることができます。社会人になると、ほとんどの人は仕事や目の前のタスクの「消費」に時間を取られて「投資」に時間を充てることができない。でも、大学生の皆さんなら消費の時間は少なくて済むはずなので、どんどん投資にシフトしてほしい。たまには、空費90%みたいな日もあっていいと思うんですけどね(笑)

西本:ちなみに、だらだら過ごす「空費」も見方を変えれば「投資」に変えることもできるよね。僕は昔バラエティ番組を見ながら「おれならこう返す」と常に予想して、ずっとMCの勉強してたり。

酒田:そうそう、通学時間も本を読むとかね。

ジョニオも僕も大学生のときにずっと練習していたから、今のパフォーマンスのクオリティが担保されている部分が大きい。大学生のうちに投資に時間を充てることで将来の消費の質が上がる。言い換えれば「時間の貯蓄」が可能ということ。大学生の時間を貯蓄して、将来にもってきてほしいと思います。

僕も今日のカバンはチャレンジなんですよ

ジョニオ:今は描いたり作ったりが楽しいと思うんですよ。でも、よく世間の大人に言われるのは「好きなことを仕事にすると好きじゃなくなってしまう」ということ。

義務感とか責任感の側面もありますが、この仕事の一番の敵は「慣れ」と「飽き」です。でも、好きで居続けるための工夫って必ずあって、それを自分の中で見つけるといいです。めっちゃ安っぽく言うと、常にチャレンジすること。

僕も今日のカバンはチャレンジなんですよ。いつもならキャリーかトートバッグで来ていたところを、めっちゃコンパクトにした。やるマジックやセリフを変えてないけど、カバンを変えただけで、今日一日が僕すごい刺激的なんですよ。僕にとってはいかにコンパクトに道具を持ち運ぶかっていう工夫なんですよ。

仕事やパフォーマンス自体は変えなくても、クリエイトに関わる要因を少し変えてみる。そうすることでルーティンワークが刺激的になる。細かいマイナーチェンジをちょっとずつ繰り返す。靴下を変える、リップを変えるとか。それが精神衛生を保つことに繋がってくると思います。

想いの詰まった感想文がたくさん

  • 自己受容の話、GPSの話のふたつが特に私に刺さりました。
  • 当時授業を受けられなくて3年越しの授業だったのですが、逆に今日このタイミングで聞けてよかったなと思いました。
  • 今回は韓国でしか受けられないのがすごく悲しいですが、次回またあれば次回こそ直接ジャグリングとマジックを観たいです。
  • 3年連続この授業を受けて、毎年が凄く勉強になって、先生みたいな素敵な人間になりたいです。
  • 最後の잘자요がめっちゃ印象に残ってしまいました。。。

…etc

あっという間の3時間!

オンラインも含めて約30名の学生さんに受講していただきました。
未来のプロフェッショナルの皆様、ありがとうございました。

出張授業のご依頼はこちらから

3人での出張授業、トークショーのご依頼は下記フォームよりお問い合わせください。
https://shingosakata.com/contact/

Text & Photo by 酒田しんご(@jugglershingo