クリエイティブディレクター・水野学さんの著書『「売る」から、「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講義』(誠文堂新光社)を読みました。
「電子マネーiD」「東京ミッドタウン」「くまモン」等のブランディングを手がけ、日本屈指のクリエイティブディレクターとして知られる水野学さん。
慶應義塾大学(SFC)での講義をベースに、ビジネスや経営における「デザインの正しい使い方」を基礎から解説した一冊です。
センスとは集積した知識をもとに最適化する能力である
「センスとは、集積した知識をもとに最適化する能力である」
どういうことかというと、ぼくらはなにかを選んだり、決めたりするときに、生まれもった才能を頼りにしているわけじゃなく、自分がそれまで蓄積してきた知識をもとに、最適化をはかっているんじゃないか、ということ。『水野学のブランディングデザイン講義』
たとえば「あの人は服のセンスがいい」と言われる人は、そもそもファッションについて豊富な知識をもっていて、TPOや体型などの条件をふまえて、最適化しているということ。
つまり、センスは先天的な才能や、なんとなくの感性ではなく、努力すれば身につけられる後天的なものなのです。
いま本当に必要なのは「問題を発見する能力」
世の中にはいま「問題を解決する能力」を高く評価する風潮があります。ビジネスの世界でもソリューションといったりして解決策が重視されている。
でも、実はいま本当に必要なのは、「問題を発見する能力」のほうじゃないかとぼくは思っています。『水野学のブランディングデザイン講義』
問題が明らかになれば、人が集まって知恵を出し合えば、たいていのことは解決できるものです。
いま世の中で求められているのは「問題を発見」する能力。
そのためには、送り手側のエゴではなく「受け手側(=使う人の気持ち)」に立って物事を考える必要があります。
世の中をあっと驚かせてはいけない
本当はちょっとした違いでいいはずなのに、差別化をしよう、アイデアを出そうとしはじめると、どうしてもまだ世の中にないものをつくらなくちゃ、なんて大それたことを考えてしまう。
それで無理をして不必要に奇抜なものをつくってしまって、受け入れられなかったり、売れなかったりすることが少なくありません。『水野学のブランディングデザイン講義』
多くの企業が奇をてらって差別化するあまり、消費者が本当にほしいと思っている「どまんなかの部分」に商品がなくなる現象を、「市場のドーナツ化」と呼びます。
バブルが終わり、「モノが売れない」とずっと言われている背景には、このような勘違いがあるのです。
まとめ
友人のマジシャンの伊藤大輔さん(@DaisukeIto1989)のおすすめで読んでみました。
業界のトップランナー・水野学さんの実績に基づいた内容で、文章もわかりやすく、ブランディングデザインの入門書として最適。
特に「ブランド」「コンセプト」「センス」といった上滑りになりがちな概念を、平易な言葉で本質的に定義している点で高評価。
「デザインなんて関係ないよ」と思ってる人にこそ読んでいただきたい一冊です。