ロルフ・ドベリ氏の著書『Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法』(サンマーク出版)を読みました。
「スイスの知の巨人」こと、ロルフ・ドベリ氏がまとめた本書は、ドイツで25万部を突破し、世界29か国で翻訳されたベストセラー。
30代前半の若さで、スイス航空の子会社で最高財務責任者、最高経営責任者を歴任したビジネスセンスと、最新の学術研究に基づいた、人生が上向きになる「具体的なノウハウ」が満載。
よい人生を送るための「思考の道具箱」が52章にまとめられた名著。
人生は静かな方が生産性が高い
それでは、あなたの人生を向上させるには、いったいどうすればいいのだろう?
『Think clearly』
それにはせわしなく動き回るのを控え、何ごとにも落ち着いて、長期的に取り組むことだ。
そしていったん「能力の輪」をつくりあげたら、その内側にとどまったほうがいい。それも、できるだけ長く。
現在、「積極性」や「多忙さ」や「せわしなさ」が、かつてないほど褒め称えられていますが、筆者は、よい人生とはその真逆をいくことであり、「人生は静かな方が生産性が高い」と断言しています。
IBMの創業者、トム・ワトソン氏はこう語っています。「私は天才ではない。私にはところどころ人より優れた点があって、そういう点の周りからずっと離れないようにしているだけだ」と。
あらゆるものの90%は無駄である
声を大にして宣言しよう。世の中にあるものの90パーセントはがらくただ。
『Think clearly』
広告の90パーセントはくだらない。Eメールの90パーセントは中身がない。ツイートの90パーセントは馬鹿げている。ミーティングの90パーセントは時間の無駄だ。
アメリカのSF作家、シオドア・スタージョンは、「SF小説の90%はクズだ」という批評家の意見に対して、「確かにそのとおりだ。だがあらゆる出版物の90%はクズだ。ジャンルなんて関係ない」と答えました。
彼の答えは「スタージョンの法則」として知られ、裏を返せば、「本当に価値があり、質の高いものはわずかである」という人生の教訓となります。
重要なのは「スタート」ではなく「修正技術」のほう
あなたはいま、フランクフルト発ニューヨーク行きの飛行機に乗っているところだ。
『Think clearly』
「飛行中、機体が予定されたルート上を飛んでいる」のは、飛行時間全体のどのくらいの割合だと思うだろうか?
飛行時間全体の90パーセント? 80パーセント? それとも70パーセント?
正解は、なんと、「ゼロパーセント」だ。
飛行機の窓から見える「補助翼」がしきりに動いているのは、秒単位で飛行ルートを修正し続けているためで、重要なのは「スタート」ではなく、「離陸直後からの修正」技術だという教訓が得られます。
大事なのは「完璧な計画を立てること」ではなく、「状況に合わせて何度でも計画に変更を加えること」であり、「よい人生とは、修正をくり返した後に、初めて手に入れられるもの」だと筆者は語ります。
まとめ
1年間で飛行機100フライトを経験した身としては「人生は静かな方が生産性が高い」という視点は、斬新かつカルチャーショックでした。
内容はコラムを集めたもので、細かく52のセッションに分かれているので、読書嫌いの方にも取っつきやすく、スキマ時間の読書にもぴったりだと思います。
巷に溢れる「AIに仕事が奪われる!」といったアッパー系の自己啓発本ではなく、内省的(=ストア哲学的)な人生訓を、クールかつインテリジェンスな語り口で楽しめる一本。